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「知財って無理」を変える AIと取り組む攻めと守りの知財経営講座―のべおか知財ワークショップ2025―

提供:延岡信用金庫 制作:日向経済新聞編集部

「知的財産(知財)」と聞いて、何を思い浮かべますか?

特許の出願や商標登録などの言葉を連想する人も多いのではないでしょうか。人々のクリエーティブな活動によって創出された、無形の資産のことです。言い換えれば、発明したアイデアや品物、デザイン、ブランド、その他の著作物などさまざま。「財産的価値のある目に見えない情報やアイデア」のことです。これらは法律で保護し、創作した人が独占的に利用できるよう「知的財産権」として認めることで、ビジネスや文化の発展を土台で支えているのです。

「うちの会社にそんなに価値のある技術はない」という思い込みや、日々の業務に追われ「知財など考えたこともない」「面倒そうなので後々やろう」と距離を置く企業も少なくないかもしれません。

経験者のノウハウを取り入れたAIを活用しながら、自社の「攻め」の姿勢を表し、「守り」を固めるための知財について、宮崎県延岡市で行われたワークショップの様子をご紹介します。非常に実践的な、AIを活用した知財セミナーです。

概要

「のべおか知財ワークショップ2025」
[令和7年度中小企業等知的財産支援地域連携促進事業]

日時: 2025年10月31日(金)、11月21日(金)、2026年1月23日(金)、2月13日(金)、3月19日(木)の14時~16時30分(全5回)
会場: カルチャープラザのべおか・多目的ホール(第1・3回)、旭化成延岡駅前オフィス(延岡駅前西口街区ビル5Fホール、第2・4回)、野口遵記念館・フリースペースA(第5回)
主催: 延岡信用金庫(宮崎県延岡市南町1-4-3、TEL 0982-22-1111)
共催: 延岡市、宮崎県工業会県北分室 協力:マナビDX Quest修了生有志

講師・ファシリテーターの紹介

■大西佑亮さん ミヅホ株式会社(米酢・味噌醸造会社)取締役・同社17代目
1988年、奈良県橿原市出身。自動車部品メーカーで開発・経営企画を担当後、家業へUターン。木桶仕込み純米酢をベースにしたクラフトビネガーを企画し、株式会社中川政七商店が主催する「経営とブランディング講座」のビジネスピッチで最優秀賞を受賞。ICC FUKUOKA 2026 「FOOD&DRINKアワード」で準グランプリを受賞

■中筋 拓さん 弁理士、中小企業診断士
1981年、兵庫県神戸市出身。京都大学を卒業後、知的財産、IT・AI活用、事業戦略支援のスペシャリストとして、企業へのコンサルティングを行う。一級知的財産管理技能士(特許専門業務)

■林田章裕さん 電気メーカー技術者
1976年、埼玉県深谷市出身。千葉大学大学院修了後、東芝で車載半導体開発を経て、AI関連の新規事業開発に従事。「誰もが簡単にIoTを使える世界」の実現に向けて、200以上の企業や大学等が共創活動をしている「ifLinkオープンコミュニティ」ではエバンジェリストを務める

■瀧口一喜さん 延岡信用金庫 企業支援課、中小企業診断士
1978年、宮崎県延岡市出身。大分大学卒業後、延岡信用金庫に就職。企業支援を担当し、補助金取得や公的施策の支援を行う。「知財の民主化」をテーマにワークショップを企画

4人はいずれもマナビDXQUESTの修了生であり、それぞれの専門分野を生かして今回のワークショップを支える。

第1回:商標はその場で調べる、特許はAIで読む 攻めと守りの知財の使い方

2025年10月31日(金)カルチャープラザのべおか・多目的ホール

  • 知財リスクの理解
  • 先行技術調査

講座初日。金曜の昼下がりに勤務先から来られたであろう、延岡市に拠点を持つ企業の代表者が会場に集まった。講師陣ともに6つの班に分かれ、PCの前に座った。今回は期間を通して、参加者には1人1台のPCとChatGPT Teamアカウントが貸与される。皆、少々緊張した面持ちに見える。

特殊金属加工、金型、電気・計装設備など「工都延岡」を代表するメーカーや、豊かな海の幸を使った食品製造会社や古くから和洋菓子の製造を手掛ける企業など7社がそろった。

主催者を代表して、延岡信用金庫の黒木哲也理事長があいさつ。今後は地域外に販路を広げていくことが大事だということを話し、延岡市のある食品メーカーが海外進出をしようとした際に、自社名(商品名)が他人に「漢字」で取得されており、商品が販売できなかったというショッキングなエピソードを披露した。技術だけでなく知財知識を持ち合わせていないと打って出るチャンスを逃すということ。「共に学びましょう」と参加者に声をかけた。

講師・ファシリテーターから、「事業戦略と併せて考えることが不可欠。取得するかしないかも、事業戦略を踏まえて判断してほしい」(大西さん)、「中小企業の相談を受けていて、痛い目に遭っている人を今までたくさん見てきた。知財について皆さんに知っていただきたい」(中筋さん)、「知財は敷居が高いような気がするかもしれない。しかし、皆で取り組めば良く、アイデアは案外思いつくものでその点は心配いらない」(林田さん)、「知財のハードルを下げるため毎回AIアプリ(GPTs)を講師陣で作ってくる。ワーク中だけでなく会社に帰ってからも使えるので、たくさん試してほしい」(瀧口さん)との話があった。

身近にある知財リスク 「転ばぬ先のつえ」を準備する

具体的なリスクとして、どんなものがあるのか。3つのリスクについて見ていこう。

1つ目は「販売後のリスク」である。国内であれば、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の活用で回避できる。国外については、海外商標の登録を行うこと。WIPO(World Intellectual Property Organization―「世界知的所有権機関」の意)の海外商標データベースにローマ字で入力し、使いたい名前が登録されているか調べることができる。

ロゴマークの大きさを調整すること、商品名を変えることで、新たな販路への挑戦をすることができた事例が紹介された。

次に「契約時のリスク」について。例えば、原材料の製造会社で独自技術が生み出され、製法の特許を取ったとしよう。設備投資を行い、量産のための設備投資も完了。そんなときに商社Aから積極的に取り組みたいと申し出があり、独占契約を結ぶ。ところが、2年たってもサンプル的な製造依頼があるのみ。調べてみると販売に向けた動きは全くないことが分かった…。

講師の大西さんから、自社のある製品を小売業者から専売したいという申し出があったという実例が紹介された。専売契約は、メーカーとしては他の販路を諦めなければならないリスクを負う。そのため、メーカーとして目標とする売り上げや収益性の観点から契約条件が適切かどうかを小売業者と協議した結果、今回は専売契約を結ばないことが双方にとって望ましいという判断に至ったという。

ここでの学びは、契約前に販売までの業務フローなどを決めておくこと。契約期間を設け、契約の「見直し」ができることを担保しておくこと。また、期間が切れたときのために、次の営業先を開拓しておくことなどであった。

最後は「展示会のリスク」。取引先を見つけるために、さまざまな企業が集まる展示会は絶好のチャンスであるが、同時に丸腰で行くと取り返しのつかない事態になる危険な場所でもある。技術が漏えいし、模倣されたり、逆に他社の権利を侵害してしまったりする可能性がある。

どこまで商品、展示物をオープンにするのか、パンフレットなどの資料にどこまで記載するかなどを決め、写真などの撮影も禁止するなどを決めることが大事。前もって、特許、意匠の出願登録を行ったり、登録商標を出願したり、権利を侵していないかの調査も必要である。

こうした調査のため、活用されたのが生成AIだ。大西講師が用意したカスタマイズ「GPTs」を用いて、参加者は自社の技術・強みを入力しながら整理し、関連する特許の調査進めていった。続いて中筋講師から特許文献の読み方の基礎を学び、同じくGPTsを活用して実際に読み解くワークを行った。比較方法を各自で調べてみた。さらに、知財の分析や技術に関する整理を行うプロンプト(指示)のやり方も学んだ。こうした一連の体験を通じて、知財は専門家に任せるだけでなく、自ら調べて理解できるものだという手応えが参加者の中に生まれていた。

第2回:大学との共同研究も夢じゃない アイデア出しもAIを相棒に

2025年11月21日(金)旭化成延岡駅前オフィス(延岡駅前西口街区ビル5Fホール)

  • AIでアイデアをブラッシュアップする方法
  • AIで宮崎大学「シーズ」と自社技術との掛け合わせ

難しい発想はAIに任せる 自社技術からアイデアを広げるワーク

まずは弁理士の中筋講師から、課題を「一般化」し、解決策を検討する「TRIZ」という手法をGPTsと組み合わせて使うことで、技術に関するアイデアを飛躍させる手法を学んだ。中筋講師は傘を閉じたときに濡れた面が内側になり、自立する「逆さ傘」の事例を用いて説明。TRIZとは発明的問題解決のアプローチとも呼ばれ、改善したいことと、改善に当たり悪化しそうなことを設定することでよりよいアイデアに導くというもの。そこに自社の強みを組み合わせ、AIの力を借りながら分解、矛盾を抽出し、解決の方向性を提示してもらう。自分の考えも入れたうえで、最終的なアイデアにたどりつく。

参加者はサポーターの助けを得ながら、自社の新たな可能性を探るワークを行った。AIは“答えを出す機械”ではなく、“考えを広げてくれる相棒“だと実感しているようだった。

宮崎大学「シーズ」とは…産学共同研究の可能性を探る

「シーズ」とは「ニーズ」(必要なもの)と共に使われることも多い言葉だが、種という本来の意味から、新しい製品、サービス、技術、または事業を生み出す可能性を秘めた技術やアイデアのことを指す。宮崎大学では主に農業、医学、工学などの分野における研究成果や、地域産業と連携した実践的な技術・知見を集めたシーズ集を公式ホームページで見ることができる。宮崎大学 研究・産学地域連携推進機構の産学官連携コーディネーター・平川良子さんから、研究シーズだけでなく、共同研究の事例が発表され、年々数を増していること、大学の研究と各企業の持っている強みを掛け合わせることで、新たな技術、商品、サービスなどが生まれていることが分かった。新たに「錦本町ひなたキャンパス」(宮崎市)に作られた「ひなたイノベーションハブ」が支援の拠点になっていることも紹介された。

ワークでは「産学連携AI検証」アプリを使って、各自の技術内容を入力してマッチングされたで関連のある大学研究シーズ、保有特許と研究可能性を検討した。

顧客課題起点での「ニーズ検証」の重要性

次に登壇した講師は、千葉市などで「アイデア出しは大喜利」とうたい、「IF-THENカード」というさまざまなIoTデバイス・サービスが記されたカードを用いたビジネス思考についての「ifLinkアイデア発想」ワークショップを開催する林田章裕さん。いろいろなシーン(お題)を考え、どんな属性を持っている人(ペルソナ)にどんな困りごと、うれしいことがあるかを発想。解決策を考える。設定したお題に対して、IF(もし、~したら)、THEN(それから、~する)でアイデアを考えるという。

これは、「顧客課題の再構成」という視点を持つことのトレーニングにもなる。新しい技術というのは、「課題があり、その解決法を探る」という過程で得られるものばかりではない。そのため、結果的に「市場ニーズがなかった」となり、新しいビジネスが失敗してしまうことは少なくない。課題を起点にしてのニーズ検証の重要性を確認した。併せて、アイデアが生まれる頭とAIの仕組みを紹介。LLM(大規模言語モデル)は人間の脳を模して作られ、どちらも言葉で学習する。思考は言葉に宿るものであり、問いや情報を与えると連想してアイデアや答えを返してくる。故に言葉でデータベース化された宮大シーズとTRIZより、ChatGPTsでアイデア発想をした今回の試みが有効であることを説明した。

最後に「NotebookLM」が紹介された。技術資料や論文を高速で理解するためのツールで、Googleが提供する、自身でアップロードした資料(PDF、Googleドキュメント、テキスト、ウェブサイト、ユーチューブ動画など)を元に、AIが要約や質問回答を行う。AIが伝えがちな「うそ」が少ないとされる。これを「AI付きノート」と考え、アイデア出しを貯めていくツールとして使うことが勧められた。

さまざまなワークを通して、新事業へのモチベーションが上がっている参加者たち。ある食品加工会社の参加者は、「TRIZに関するAIを使い、矛盾を発見し、原理を整理してくれるので、製造工程の改善を考えることができた。今回作っていただいたソフトが優秀すぎるので、ChatGPTの使い方が分からなくてもできる」と感想をもらした。発想は才能ではなく、構造化と手順で量産できること、「AI×TRIZ×シーズ」と掛け算することで、ぐっと「発明」に近づく実感が得られたようだった。

第3回:AIで出願はここまでできる アイデアを形にする知財実践

2026年1月23日(金)カルチャープラザのべおか・多目的ホール

  • AIを活用した明細書作成
  • 意匠・商標の申請書記載ワーク

今回はより現実的なアプローチ、「ビジネスで勝つ」ための知財について学ぶ。まずは弁理士の中筋講師が講義。企業側は「弁理士に任せれば『良い権利が取れるだろう』と思いがちだが、そうではない」と断言する。企業側が出願書類のサンプルである「発明提案書」を作成することで、弁理士のパフォーマンスが上がり、企業にとっても技術資産の蓄積に役立つので、作成することを勧めるという。

包丁の刃の特許を例に、「従来の技術(今は何があるのか)」「課題(困り事)」「解決策」「取りたい権利(どこが大事か)」「バリエーション(別の解決法は)」を発明提案書に書き、良い権利へ昇華することが大切だと述べた。

今回のセミナーのために作った「発明提案書作成GPT」を使い、実際に出願書類を作ってみるワークを行った。要は「AI弁理士」の力を借りることで出願書類へのハードルを下げ、内容を理解してチェックしようというもの。

実際にAIを使っての提案書作成に、参加者は「普段は生成AIを使っていないが、使ってみて完璧ではないが、だいぶ楽になると思った。AI弁理士で図面を出したが、思ったよりもいいものができて、『文章だけでこれだけできるのか』と驚いた」、「特許を書いて出したことがあるが、今までは似たものをまねて作成するなどし、労力が必要だった。今回のGPTは請求項まで出してくれ、特許申請のハードルが下がると感じた」と話す。出願の経験がない人はもちろん、ある人にとってもその有効性を実感していた。

自社ブランドを大事に育てるための「登録商標」

「意匠権」については、菓子店「虎彦」の「羊羹(ようかん)一人ひとり」を例にとり、説明された。特許のように難しい文章での説明は必要なく、「願書」と「図面(または写真)」で登録できる。瀧口講師から見た目を模倣されると顧客が奪われるリスクに関して話があった。

次は、「登録商標権」について。純米酢や味噌(みそ)の醸造元であるミズホ株式会社代表取締役の大西講師が解説した。自社で開発した木桶仕込み純米酢をベースにしたドリンク「saku(さく)」を自社のブランドとして育て、他社に使われず、自社が継続して商品名として使えるようにするため、「標準文字商標」として登録したという。これは、フォントを指定せず、文字のみを保護する権利。他に文字のみでなくデザイン性も含めた「ロゴ商標」、文字のない図形のみの「図形商標」がある。

具体的な商標登録の流れや特許庁からの「拒絶通知」があったことなども説明し、「特に海外に進出する場合、名前を決める初期の段階でAIの調査力を逆手にとって、まだ世の中に存在しないか確認してみるのもいい」(大西講師)との話もあった。

林田講師が担当した「未来を創る知財戦略」では、「特許」を取るか取らないかの判断基準が示された。特許とは20年間独占権を得る権利。そもそも「特許性はあるのか」という問題から、およそ200万円かかるコストに見合うのか、進歩の早い時代にあって、すぐに廃れる技術ではないか、特許による戦略的な価値はあるかどうかまで、さまざまな観点が伝えられた。また、知財のオープン戦略によるエコシステム化で、今の世の中は形づくられていること。「早く行くなら一人で行け。遠くまで行くならみんなで行け」の有名な言葉が披露され、権利を開放して世界標準になった「QRコード」などの事例も。一方で、かの発明王・エジソンが「電球」だけでなく、ビジネス面で支配する「発電・送電」というインフラまでも特許化し、総数2332件の登録を行い、知財戦略の元祖であることを紹介した。

第4回:知財で損をしない 契約と業務に落とし込む実践

2026年2月13日(金)旭化成延岡駅前オフィス(延岡駅前西口街区ビル5Fホール)

  • 知財契約の実務
  • 知財目線の業務フローチェックリスト
  • 国や県の知財施策紹介

儲けを奪われないために…「不利な契約」とは?

より実践的な内容に進む、講義4日目。自社にしっかりと儲けを生むために、知的財産に関してどんな契約をすればいいのだろうか。弁理士の中筋講師に再び登壇いただく。

まずは、契約管理の成熟度レベルについて。口約束は論外だが、契約書があっても相手方の用意したものをそのまま使えば、相手が有利である可能性が強い。また、公的機関のひな型もあるが、個別の強みまでは守れない。ひな型を基にして、自社の強みを守れるようアレンジするのが、手間が少なく、効果が高い。ここを目指すそうと講師が呼び掛けた。

その後、「秘密保持契約(NDA)」「共同開発契約」「開発委託契約」「製造委託契約」「ライセンス契約」などの代表的な契約が示され、失敗事例が紹介された。一つ例に取ると、中小企業にありがちなのが共同開発契約によるもの。中小企業Aと大企業Bが共同開発を行う契約を結び、開発に成功。「成果は共有」することになっていたが、資本力の差により、実質的に大企業Bが市場を独占することに…というものだ。成果を「共有」にせず、貢献に応じた帰属とすること、契約前からの持っていた「既存技術」を具体的に確認しておき、今回の「成果」と区別することが大事であると講師は解説した。

後回しにしない! 知財を業務フローに入れ込もう

次は日常の業務のどのタイミングで、どのような知財活動をするか考えるためのワーク。業務が忙しいと知財のことが忘れられたり、後回しになったりするのは容易に想像がつく。そうならないために「日頃から知財を業務の流れに埋め込んでおけばいい」(大西講師)のだ。その実現に大いに役に立つのが今回作られた独自のウェブ上アプリ、「チェックシート」。業務のフェーズごとに、考えねばならない知財に関する事柄、たとえば「他社技術調査」や「外国出願の検討」など60種ほどの「候補カード」を使い、「技術/特許」「デザイン/意匠」「ブランド/商標」のジャンルに分けて、まさに埋め込んでいく。各社がどのフェーズで何をするのかを事前に確認し、その時が来たらチェックすることができる。

PC上でそれぞれの参加者が自社にあったチェックリストを作った。実際にこのアプリでチェックすることで「仕組み化」され、知財について自然と社内で考え、共有する体制が作られる。出願をしないという判断、つまり戦略をとるにも有効だと話があった。

特許庁の補助事業も 知財に関する支援を知る

最後に宮崎県産業振興機構の岩下憲太郎さんから、知財に関する同機構の支援について話があった。研究開発における伴走支援体制もあり、技術的な助言のほか、補助金・助成金の申請にかかわる支援も行う「ひなたイノベーションハブ」の活用をアピールした。

延岡信用金庫の職員が準備や受付などを行い、4回目の講義も無事に終了した。

第5回:知財戦略を言葉にする 3分で伝える実践ピッチ

2026年3月19日(木)野口遵記念館 フリースペースA

  • 知財戦略書の作成
  • 発表

文章もデザインも! AI活用で楽に知財戦略書を作る

いよいよ最終日。今日はまとめにふさわしく、知財に関する戦略書を作り、発表するところまでをゴールとする。たった2時間で本当にできるのかと思うかもしれないが、そこはAI活用講座。スピード感が必要な課題は大の得意である。

ワークに先立ち、大西講師は知財を単独で考えるのではなく、事業戦略と結びつけて捉える重要性を語った。自社として何を実現したいのか、そのために最初の一歩として何をするのかを定めることで、日常の情報や人との出会いが事業機会として立ち上がってくるという。「まず行動を決めることで、結果的に知財の観点でも物事が見えてくる」と、その実体験を交えて説明した。

知財戦略書に含む内容は、以下のものが考えられる。
「事業テーマ」「競争ポイント」「自社の勝ち筋」「まねされると困る部分」「知財で守るポイント」「最優先にする知財」「次に優先する知財」「今後1年の行動」

これらをGPTsがガイドし、対話し、形を整える。その後、NotebookLMに情報をアップロードし、使うソースを選択。発表を行うので、今回は「スライド」を選択し、見やすいプレゼン資料になるように出力してもらう。このAIアプリの優れたところは、アップロードした資料や選んだソースのみを利用して生成し、必ず「引用元の該当箇所」が表示されるところ。また、アップロードされたデータは、AIのトレーニングに一切使用されない。

3分ピッチに挑戦 自社の魅力を伝え可能性を広げる

アップロードした文字データは、ものの3~4分で、図やイラストなどを含んだ5~8枚のスライドになった。各社さっそく3分ピッチに挑戦する。

感心するのは、情報の個性が出力したスライドに反映されるところ。例えば、塗料の専門商社の場合、ブランド名にある「極」という文字から高級なイメージと認識したAIが、ゴールドを多用したり、塗料を連想させるようなイラストや「コーティングする」などの単語を選択したりする。つまり、文字での情報を解釈して表現してくれる。制作者の好みによって、仕上がりの雰囲気を「ポップ」とか「カジュアル」などと選ぶこともできるという。

「宮崎大学と共同研究する電圧に関する技術について」「健康分野に使える電気伝導チップについて」「ウォータージェット機の欠点を補う技術について」「半導体装置の部品作成に応用できる金型について」「常温で流通できるカラスミについて」など、それぞれが自社の強みを商標や意匠の登録、逆に「秘匿」に使う知財の活用で、さらにパワーアップするビジョンが発表された。

弁理士の中筋講師から、「開示と秘匿のバランスに着目した点がいい」「おしゃれという観点からではなく、形状によって性能に差が出る『意匠』に注目したのがよい」「知財ミックスの考え方がすばらしい」などと良かった点が伝えられ、「性能+ブランドでいい名前が付けられるのでは」「共同研究は知財管理に注意すること」「何を開示して何を開示しないかのルール作りをしよう」などのアドバイスがあった。

知財戦略は事業戦略の一部分。「知財は事業で儲ける仕組みを強固にするツール」であり、「知財権は集めるだけでなく、活用することに意味がある」(以上、中筋講師)ことを念頭に置いて事業に取り組みたい。

「GPTs×知財」のセミナーは日本初か 「知財を経営の武器に」

5日間のセミナーを終えるにあたって、宮崎県工業会県北分室の山本卓也専門委員から講評があった。その中で、2024年の特許出願件数が30万6,855件で前年比の伸び率は3.6%であること。中小企業の出願数は、2024年に3万8,037件だったが、前年は4万221件と4万件を超え、伸び率は大企業よりも大きいこと。特許出願件数に占める中小企業の割合は16%に上っていることが指摘された。山本さんは「今は国の補助金も増え、支援制度も充実しているので利用しない手はない。知財という大きな武器を手に入れれば、製造業の下請けという立場から脱却することができ、現に小さな企業でも優れた技術を大企業に買いたたかれることなく、権利化した例もある。知財を自社の生き残りの武器にしてほしい」とエールを送った。

参加者からは「自分で調べて特許の申請書を作ったことがあるが、今回の生成AIを使っての作成は圧倒的に楽だった。GPTsと壁打ちをして、本当に稼げるのか、市場はどうなっているのかなどを調べ、自社だからできることを今後も探っていきたい」や「本当に勉強になった。私たちは商社という立場で何ができるのかと思っていたが、商標を取ろうと思う」との声が聞かれた。

この日はオンライン参加の林田講師からは「『ChatGPT×知財』とここまで生成AIを積極的に多く活用した知財セミナーは、恐らく日本で初めてなのではないか」という言葉も。日本初(?)のAI活用知財セミナーはそれぞれの企業の明るい希望につながる成果を残し、閉幕した。

知財は難しいものではなく、自社の強みを見つめ直し、行動につなげていくための手段である。今回のワークショップでは、その考え方が参加企業に浸透し、終了後1週間以内に2社が商標出願を行うなど、その場で決めた内容が具体的な行動へとつながっている。

【参加企業】株式会社興電舎、合同会社SA・Te黒潮、虎彦株式会社、マツタ工業株式会社、松山塗料商事株式会社、森山工業株式会社、吉玉精鍍株式会社

【サポーター】宮崎大学産学官連携コーディネーター、宮崎県産業振興機構、INPIT宮崎県知財総合支援窓口

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