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宮崎・日向で「注文をまちがえるスープ店」 認知症の高齢者が店員に

客にパンを提供する70代男性

客にパンを提供する70代男性

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宮崎・日向の「食堂tetote(テトテ)」(日向市鶴町2、TEL 0982‐57‐3554)で、認知症を患った人が店員を務めるイベント「注文をまちがえるスープ店」が行われた。

(左から)TABERUの林さん、川崎さんらテトテのスタッフ、社会福祉協議会のメンバー

 企画したのは地域商社「TABERU」の林幸広さん。東京などで2017(平成29)年6月から不定期に行われている、認知症の人がスタッフの「注文をまちがえる料理店」の取り組みを知り、共感した林さんは主催者の一人である小国士朗さんを訪ねた。障がい者施設職員として働き、施設内にカフェを作り、通所者が働きながら過ごせる場所を作ったこともある林さん。宮崎で同様の趣旨でイベントを行いたいことを伝え、小国さんから「林さんがやるなら、オリジナリティーを出した方いい」とアドバイスを受け、スープ店をコンセプトにした。今回は日向市社会福祉協議会に協力を仰ぎ、開催した。

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 認知症の70~80代の男女3人がスタッフとして計22人の客の注文を聞いたり、食事を出したりなど、ホールスタッフとして働いた。最初のうちは表情が固く、ぎこちない様子だったが、積極的に注文を取りにいったり、水を出したりしたスタッフ。料理を出しながら「メニューAです」「おいしいですよ」と客に声を掛ける姿も見られた。

 スタッフを務めた80代男性は「あいさつをして、食事を出し、お皿を下げるところまで全部やり、楽しかった。言葉遣いも考えた」と話す。

 コーディネーターを務めた協和病院認知症疾患医療センターの河野幸代さんは「都合が合いそうな方、興味のありそうな方に声を掛け、今回はお三方にスタッフをやってもらった。最初は緊張した様子だったが、だんだんと意欲が湧き、気持ちの変化を見ることができた。軽度の方も重度の方もいらっしゃったが、慣れない仕事に意欲的に取り組んでいた」と話す。

 「tetote」店主の川崎一史さんは「認知症の人が周りにいないので、どんな方が来るのかなと思っていたが、皆さん元気で驚いた。飲食業の私たちはどうしても接客に関して高いレベルを求めてしまうが、認知症のスタッフとお客さんのコミュニケーションを見ていて、素直にいいと思えた。普段とは違う温かい雰囲気が漂っていた」と笑顔を見せる。

 客として来店した人は「にこやかで頑張っている姿が印象的。心地よい接客が楽しかった」「認知症の方が働くと聞いて参加したからか、優しい気持ちで食事をすることができた。料理からも優しさが伝わってくるようでとてもおいしかった」「客に対してぎこちないところが、味があっていいなと感じた」との感想を残した。

 林さんは「いろいろなことが起こることを想定していたが、今回はあえてプレイベントとして小規模に行ったこともあり、予想以上にスムーズだった。店の雰囲気ともマッチし、店内に優しい空気が流れた。次回はもう少し広い場所で、スタッフも増やし、多くの方に体験してもらいたい」と話す。

 次回は12月開催を予定する。場所など詳細は未定。

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