宮崎・日向の中央公民館(中町)で7月12日、「リチウムイオン二次電池」の発明者の一人である化学者、吉野彰さんによる講演会が開かれた。主催は日向共栄会。
吉野さんは、旭化成で1981(昭和56)年に新型二次電池の研究に着手し、1985(昭和60)年にリチウムイオン二次電池の原型を完成させた。リチウムイオン二次電池は現在、パソコンやスマートフォン、電気自動車などに使われている。現在は旭化成名誉フェローなどを務め、主催者によればノーベル賞候補に何度も上げられ、「ノーベル賞に最も近い男」と呼ばれているという。
今回の講演は「先端技術講演会 リチウムイオン電池 現在・過去・未来」と題して開かれた。会場には日向高校フロンティア科の生徒100人のほか、市内外から計約500人が集まった。
研究の発端は新型二次電池の開発を目的としたものではなく、後にノーベル化学賞を受賞する白川秀樹博士の発見したポリアセチレンの誘電性についてのものであった。原型開発から商品化までの間に安全性を確保するため、延岡市の火薬工場で実験したことや、新しい技術を世に送り出してもすぐにヒットするわけではなく、5年ほどはこう着状態が続くことなどを説明した。1995(平成7)年にIT革命が始まり、市場が拡大。現在はET革命(Environment &Energy Technology)のさなかで、吉野さんは「次の変革は主として自動車メーカー。2025年には電気自動車の普及率は15%になり、しかるべき時には100%になる。第4次産業革命として具体的な姿を現し、電池も車とリンクしながら変わっていく」と話した。
2025年以降の電気自動車は、AI技術を駆使した無人自動運転機能を有するAIEV(Artificial Inteligence Electric Vehicle)に切り替わるという。吉野さんは、マイカーをなくすことによる地球環境への貢献や交通事故、交通渋滞の激減などの社会的メリットが予測され、コスト負担の大幅低減や移動中の時間の有効活用などの個人にもたらされるメリットについても説明した。
講演を聴いた日向高校フロンティア科3年の寺原隆世さんは「学校の授業でリチウム電池の原理について学んでいたので、話を聞き、納得できた。AIを搭載した自動運転の電気自動車が行き交う未来を予測した映像が印象的だった。これからは自分たちの未来を見据えて生活していきたい」と語った。