日向備長炭の窯出しを体験するツアーが12月14日、美郷町北郷宇納間で行われた。
(左から)二十歳から炭作りに携わる早川さん、主催した砂原さん。右から2番目が下川さん
日本の三大備長炭の一つに数えられる「日向備長炭」。和歌山の紀州備長炭、高知の土佐備長炭がウバメガシを原料とするのに対し、日向備長炭はアラカシを切り出して作る。美郷町役場農林振興課林政担当の桑津紀大さんは「江戸時代から300年の歴史があるといわれる。ウバメガシに比べ、アラカシは軽く扱いやすく、出来上がった炭の目がきれいで、温度調節がしやすいとされる。京都の料亭でも昔から重宝されていたと聞く」と話す。
同ツアーを企画したのは宇納間にルーツを持つ日向市在住の砂原勇紀さん。日向市観光協会に勤めるが日向市駅発着の自主企画として、日向備長炭の伝統を守り、周囲の人にも広く知ってもらおうと自ら実施した。砂原さんは「宇納間の産業で文化でもある日向備長炭が、絶えることなく続いていくよう企画した。子どもの頃、夏休みには祖父が五十鈴川でとった魚を川辺で備長炭を使って焼いてくれ、今でもおいしい記憶として心に残っている。いろいろな人に日向備長炭と接点を持ってもらえたら」と話す。
この日、参加者が訪れたのは6年前に福岡県から移住し、炭焼き師となった下川陽一郎さんが作業する窯。下川さんは「グリーンノーム」という会社をおこし、日向備長炭の製造、販売、輸出などを手掛ける。下川さんの師匠で20歳の頃から炭焼きを行う早川節夫さんらが窯の中から炭をかき出す「窯出し」の工程を見学した後、実際に窯出し体験や出来上がった炭の仕分け作業などを行った。下川さんによると、備長炭を作るには約3メートル四方の窯に7トンの原木を入れ、まきで火をくべ乾燥させ、自然着火後、酸素の調節をして、窯出しのタイミングを見るという。
下川さんは「原木を入れてから炭のかき出しまでは1カ月超かかるが、昔から人間の都合に合わせるのではなく『窯に合わせろ』という。匂いや煙の具合を見て決めている」と話す。