
日向市中央公民館(日向市中町)で8月10日、「牧水・短歌甲子園」の決勝が行われ、県立宮崎北高校が優勝した。同高は初出場にして、初優勝。
日向市東郷町出身の歌人・若山牧水の功績をたたえて始まり、今年が15回目となる同大会。9日に1次リーグ、2次リーグが行われ、ベスト4に進出した県立宮崎北高校と神奈川県の県立光陵高校、愛知県の名古屋高校と東京都のNHK学園高校が準決勝でそれぞれ対戦し、決勝は宮崎北と名古屋のカードに。審査員である歌人の笹公人さん、大口玲子さん、俵万智さんがより良いと思うほうのチームの旗を揚げ、2-1で宮崎北が今大会の頂点に立った。
宮崎北高校の石田千夏さん、海野漣さん、岡田華音(かのん)さんの3選手は3年生でクラスメイト。国語の授業で3人1組で一緒に短歌を作り、その歌を同大会の書類審査に出したところ、予選を通過。授業や夏休みを利用して、短歌を作り、鑑賞の仕方も学んでいったという。石田さんは「実感がわいてない、率直にうれしい」、海野さんは「3人で助け合いながら、いい短歌を作り、対策できたのがよかった」、岡田さんは「(作歌の)経験がないからこそ、私たちの歌が新鮮で、そこが評価されたと思う」、と話す。3人を指導した国語科教諭の藤崎正二さんは「ふわっとしているけどいい味を出す石田さん、不思議な言葉遣いが持ち味の海野さん、瞬間を切り取り、心の変化をすくい取ることができる岡田さんと3人の個性がバランスの良さにつながり、優勝できたのではないかと思う。授業でも短歌甲子園でも恋の歌が盛り上がるので、恋の歌を作らせた」と話す。藤崎さんの率いたチームが優勝するのは、2016年開催の第6回大会以来2度目。
延岡市から出場の宮崎県立延岡工業高校(延岡市緑ヶ丘)と尚学館高等部(大峡町)は惜しくも準決勝には進めなかった。今年1月の「歌会始の儀」に最年少の入選で参加した尚学館高等部2年の森山文結(ふゆ)さんは、惜しくも準決勝に進めなかった。森山さんは、「楽しかった。他の大会でも優秀な成績を収めていて、あこがれていた名古屋高校と戦うことができて、うれしい。自分たちの力を高めあえた。一つの物事を丁寧に詠みこむことが短歌の良さなので、これからもずっと詠んでいきたい」と話す。
今大会の結果は以下の通り。団体戦の部は優勝=宮崎県立宮崎北高校、準優勝=名古屋高校(愛知)、第3位=神奈川県立光陵高校、NHK学園高校(東京)。個人戦の部は、牧水賞=「父はなぜ手相占い信じずに足つぼだけは信じ続ける」(熊谷涼那・福岡県立八女高校3年)。作品賞は若山牧水記念文学館長賞(伊藤一彦館長)=「訛ってもサ行鋭く響くだろうアナウンサーが〈処理水〉と言う」(重黒木俊陽・NHK学園高校3年)、俵万智賞=「調停が終わった母に連れられてソーダ水には嘘めく緑」(近藤理仁さん・名古屋高校1年)、大口玲子賞=「弁当を分け合っている屋上の留学生と留年生と」(細田連太郎さん・名古屋高校1年)、笹公人賞=「耳川にさらすこころは水心さらさらまんざらでもない君へ」(帯谷到子さん・尚学館高等部2年)、日向若山牧水顕彰会長賞(那須文美会長)=「アルバムのばあちゃん見つめるじいちゃんの目は初恋のあの日のように」(熊谷涼那さん・福岡県立八女高校3年)、牧水・短歌甲子園実行委員会賞=「共学化した高校の男女比がサウジアラビアぐらいだってさ」(細田連太郎・名古屋高校1年)、牧水・短歌甲子園OGOB会「みなと」賞=「もし僕が空を自由に飛べたなら学校の窓から帰るのに」(重黒木侑さん・宮崎県立延岡工業高校2年)。パフォーマンス賞=藤井綾音さん(神奈川県立光陵高校)。